PYPからMYPになって毎日が夏休みの自由研究

感想:理解する前にどんどん授業が進んで、タスクに追われてとにかく忙しかった。

家族の仕事の都合で、海外に滞在することになり、現地の日本人学校ではなくインターナショナルスクールでIBカリキュラムの学校に転入するお子さんは近年増えてきています。日本でもIBカリキュラムを取り入れている学校が少しづつ増えてきて、文部科学省IB教育推進コンソーシアムのサイトでは一部のIBの資料は日本語で見ることもできます。

家族からもPYPの時は楽しそうにしてたけど、MYPになったら毎日受験生のように夜遅くまで課題に取り組んでいて、大変そうというのはよく言われています。IBカリキュラムは自分が子供の時に習ってきたスタイルと異なり、英語も量が増えているので、中学生の時点で子供が何をどう勉強しているのかよく分からないかもしれません。

PYPの時は、ユニットのテーマに関してグループやクラス全体でアイデアを出し合い、最終的にユニットの課題をまとめて、発表し、振り返りをする感じですが、MYPはこれを一人で行えるように訓練し自走できるようにしていくので、毎日が夏休みの自由研究をしている感じです。

PYPでは担任制で主要科目については同じ先生が担当しますが、MYPでは教科ごとに先生も変わるので、授業を受ける生徒にとっては教科ごとに意識が分断されやすいのかもしれません。学年レベルに応じた教科ごとに要求される学習知識の習得をしながら、教科に関わらず使えるスキルであるApproaches to learning (ATL)も同時にレベルアップさせていくのはPYPもMYPも同じで、MYPでは8教科が絡み合いながらスパイラル状にレベルアップしていきます。

よく考えられたMYPのユニットプランは横(教科間)の連携が取れています。8教科それぞれを単一科目として考えてしまうとより複雑に感じるのは当然です。

例えば、学校では次のように授業が展開していきます:

  • Mathでグラフ知識をInputしてScienceの実験結果をグラフにして分析する
  • Language and Literature で行うスピーチ表現がI&Sの探検家になりきり探検という行為の正当性を主張するグループとそれを否定して探検家を訴えるグループに分かれてディベートをする
  • デザインの教科のATLがSelf-managementで、工作器具の取扱注意が先生から約束事項として提示され自然な流れの中でInputされ、Scienceではラボレポートの実験で注意事項を書きなさいというOutputになります。

別の教科でInputしたことが絶妙なタイミングでOutputする機会が出てくるので、科目ごとに分けて見ている限りは気づきにくいので混乱しやすいかもしれません。

ユニットが始まったら

ユニットの最初に出てくるUnit title, Key concept, Related concepts, MYP global context, Statement of inquiry, ATL skills については必ず目を通しておいてください。

Unit titleやStatement of inquiry はユニットの学習テーマなので他のものよりは直感的に理解できると思います。

Key concept, Related concepts, MYP global contextは抽象的で分かりにくいので、それぞれを深追いする必要はないですが、学習を進める上で必ず行う思考やアイデアを広げる時の方向性や、広げた後に課題や成果物でどれを使ってまとめるのかを選択する時の目安になるので、意識はするようにしてください。PYPではキンダーからこれを先生にガイドされながら、複数人で行うことで、様々な考えや意見に触れる機会が生まれます。MYPからはこれを自分はこういう考えだけど、Aさんの場合だったらどうだろう?などと一人で立場や見方を変えながら考えを広げます。

慣れるまでにある程度の時間は必要かもしれませんが、科目ごとに考えるのではなく、全体として教科間を行き来しながら考えることができれば、Inputした知識を土台として、Outputとして応用できるので、0から考え出すよりは時間的にも、精神的にも負担は減るはずです。

そのため、先生から渡される資料、テンプレートは教科にかかわらず、すべて保存して、自分なりにまとめて、いつでも取り出せる、見返すことができるようにしておくことをおすすめします。一見白いところが多く役に立たなそうに見える資料でも、思考やアイデアを広げるためのグラフィックオーガナイザーだったり、自分の考えをアカデミックにまとめて他者に効果的に発信するためのテンプレートであったりで、それらはずっと学習のサポートになっていくものです。毎日の宿題や課題の提出で使うグラフィックオーガナイザーやテンプレートは提出して終わりではなく、書き込む前にコピーをして、提出用とテンプレートそのものをデータで保存しておくといいでしょう。